香水

2021-06-10

自分のために香水を買った。どこかへ出かける時につけるのではない。誰にも嗅がせない。私が一人で部屋にいる時にだけつける。自分で嗅いで、いいな、と思うだけのもの。この上ない贅沢のような気がしている。

若い頃、香水が好きで集めていた。自分のためでもあるが、人を意識してのものだった気がする。よくつけていた香水はもう手に入らない。年月で煮詰まって濃くなったその香水が、探せばまだどこかにあるかもしれない。でももう思い出したくはない。香りと記憶の結びつきは強いものだから。

30歳を過ぎ、青森に戻ってきてからは全く何もつけなくなった。化粧もどんどん薄くなっていった。数年前から髪を染めることもやめたし、ほとんど黒い服しか着なくなった。アクセサリーも何もつけない。

そんな私が、香水を買ったのだ。ただ自分のために。自分の気分のためだけに。