風邪立ちぬ

2018-11-07

わたしは風邪をひかない。

ということが数少ない長所になっていた。
はずであったが、ひいてしまったもんはしょうがない。薬をのんだり、お医者へ行けば、たちまち風邪が風邪らしくなって余計にひどくなるのが経験としてあったので、私はよほどのことがない限り風邪ぐらいでは薬も医者も必要としない。のだったが、漢方とビタミンと水分を摂って一日で治すつもりのものが二日、三日と延び、一週間が経ち、熱も上がらず食欲は通常通り(いやむしろ旺盛)だというのに鼻水と咳だけがだらだらと続いていた。

昔、風邪をこじらせて肺炎になり入院したことがある。その時の医者に「子供のことをよく見ていれば変化に気づいたはずですよ」と叱られたことを母はいつまでも気にしていて、私が連続で咳をしたりすると今でも過剰に心配しているかのような素振りを見せる。「心配しているかのような」と書いたのはそのままの意味で、彼女は決して私の健康状態に関心もなければ心配もしていないのだが、わざわざそういうポーズを取ることがあり、それがまんまと私にバレているというわけだ。

今回も、直接私をいたわるようなことは何もせず、ただただ肺炎じゃないの?気管支炎じゃないの?咳喘息じゃないの?と心配するふりをしてとっくに知っている情報をあれこれ持ち込み、あらゆる疑いをかけて医者へ行け行けとうるさいので、仕方なく町医者へ行ってみた。

発熱や体の痛み、食欲不振などは無いが、咳だけ長引く風邪が流行っているらしかった。一ヶ月咳が続いた人もいるという。レントゲンをとり肺炎の疑いはないということで、咳や鼻水を止めたり痰を出やすくする薬などが出された。

薬を飲むとたちまち「風邪っぽく」なった。これこれ、これが嫌なんだよ。内から出ようとしているもの(咳)を無理やり抑えつけ、痰だけ過剰に出やすくさせられてる感じ。不自然コントロール。体感としては医者へ行く前よりも苦しい。十数年前に夏風邪をこじらせたのをきっかけに大人の喘息になって死ぬ思いをしたことが頭をよぎる。あの時も風邪だと診断されて薬を飲み、それでも全く良くならずむしろ悪化して呼吸困難になったんだった。後で調べたら、その時出された薬は喘息には逆効果だったことがわかってゾッとした。今回もそれではないか、大丈夫か。恐ろしくなったが、気道が狭くなっている感じはない。とりあえず暖かくして眠ることにした。

次の日、てきめんに薬が効いてきた感あり。前日の違和感は何だったのか。よしよし、治ればいい、治ればいいのだ。

そうして、おとなしく薬を飲んで回復を待っていたが(この間ずっと仕事には行っている)、ある晩、鼻水が喉に落ちてくる感じが続いて眠れなくなってしまった。喉の違和感で寝ていられないのだ。なんども体勢を変えながら4時間ほどは眠れただろうか。うーん、大丈夫なのか。

結局、出された5日分の薬を飲み終えてもうっすら咳が残る結果となった。あとは回復するぞという自分の気合い次第だと心を決めた。その後もマスク着用、ビタミン摂取、防寒を心がけ、実に二週間半ほどかけてようやく完治。

 

もう自分の健康を過信できる年齢ではないのだと痛感した。
気温が下がり空気が乾燥するこの季節、みなさまもどうぞお気をつけください。


サイゼリヤ「柔らか青豆の温サラダ」

 

※画像と本文は一切関係ありません。