by the way…

2019-05-25

むかしむかし、地方の高感度少女たちは文通をしていた。

外部に趣味の合う友達を見つけて情報交換する手立てがそれぐらいしかなかったのだ。
(そういう意味では今はいい時代だよ、ほんとに)

手紙に書く内容は、リアルはんぶん、フェイクはんぶん。100%リアルの子もいたとは思うけど、私は半々だった。遠方の相手がわざわざ私に会いに来るわけがないと思っているので、はんぶん嘘の自己像に酔いながら書くことができた。まあ、若干のむなしさはあるんだけど、夢を見たかったのだ。手紙の内容はさておいて、そのうち体裁に凝り出すようになっていった。既製のレターセットなどは使わず、趣向をこらして実験的なことを色々やった。当時はメールアートという言葉を知らなかったが、それに近いことをやりたくてやっていたような気がする。
お互いに「この子、センスがいい…」と思えばすぐにライバル同士になり、刺激し合いながら“作品”(すでに手紙の域を超えている)を向上させていき、どんどんエスカレートしていった。しかしそんな関係も受験 、進学、共通の話題だったバンドの解散等で消滅。

知り合いではないけれど面白いなと思ってフォローしている人がいて、たまたまさっきインスタを開いたらその人のpostが一番上に来ていた。なんとなくそのpostについたコメントの送り主の名前が目に止まった。同じ名前の文通相手がいたことを思い出す。特徴的な名前なのだ。

テレビ番組の「あいつ今何してる?」ではないが、中学時代に文通していた女の子の名前を検索してみることにした。あれ…漢字どんなんだったかな…思い出せないので氏名をローマ字にして検索してみる…

一人、ヒット。

facebookがあったけど私はfacebookをやっていないので見ることができない。
pinterestが出てきた。pinterestというのは、ネット上の画像でいいなと思ったものに「ピン」をして収集し、分類できるサービス。

見てみる…
この人で間違いないことがわかる。

なぜなら、
私が中学時代にハマって彼女に教えたミュージシャンの画像がたくさんピンされていたから。
ほかにも私が当時作っていたオブジェや、文通中の手紙に施したコラージュなどの影響と思われる画像がたくさんピンされている。

私の影響を受けた人っているんだな…
ごめんなさい、と思った。

最初のきっかけは私かもしれないけど、それ自体の魅力で彼女はそのミュージシャンやオブジェを好きになったのだ、というのはもちろんわかる。けれど、私の影響で引っぱってごめん、という気持ちにもなるのだ。彼女はもともとはこういう趣味ではなかった。あっけらかんと明るくポップなものが好きだったはずで、そのまま素直に育てばよかったものを、私のせいで彼女を間違った方向に向かわせてしまったのではないか、などと。

それこそが傲慢だという気もする。私ごときの影響で彼女の人生が狂ったとか狂わなかったとか、そこまでの影響力はないはずだし、私だって誰かの影響の寄せ集めでできている。わかってる。知ってる。だけど、見ちゃうとさあ、なんかやっぱり「ごめんなさい」なんだよな…

きっと、私のこと好きだったんだろうな。ありがとね。

私の存在はあなたがどうググっても見つけられないと思う。ぜったいに見つからない場所で、あなたと同じように写真なんか撮ってネットにあげてる。いつかどこかで会っても知らんぷりするから笑、今のうちに謝っとくよ、ごめんね。

P.S.
さっき見たインスタでコメントしてた人、彼女でビンゴかも。共通点は「ロンドン」。こわい。こわいなあ! 私は世界の急速なつながり方がこわい。もう今は、見えない糸どころではなくなっている。糸がどんどん見えてきてこわい。でも私はつなぐ糸、つながない糸を自分で選ぼうと思う。